NFIX
遺伝子名: NFIX
疾患名 |
マラン症候群
Malan syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 |
NFIX遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
NFIX遺伝子の変化が、マラン症候群の原因であることがわかったのは2010年のことです。当初は「ソトス症候群」という別の症候群と似た特徴を持っていたため、「第2ソトス症候群」と呼ばれていました。現在は、原因となる遺伝子を最初に発見したMalan先生の名前にちなんで、「マラン症候群」と呼ばれています。アメリカの患者団体には350人以上の患者さんが報告されており、今後も多くの情報が集まると期待されます。
どういう症状があるの?
この体質をお持ちの方では、成長や発達、体の特徴などについて、気をつけたほうがよい特徴や症状がいくつか知られています。以下にご紹介する内容は、限られた報告や研究をもとにまとめられた情報で、すべての症状を網羅したものではありません。あくまで「この体質の方にみられることがある傾向」としてご覧ください。また、同じ体質を持っている方でも、症状のあらわれ方や程度には個人差があります。すべての方に同じような症状が出るわけではありません。この情報は、「どんな症状が出る可能性があるのか」を事前に把握しておくためや、実際に見られた症状がこの体質と関係しているかを医師と一緒に考える際の参考として役立ててください。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしていることが多いと言われ、その程度は様々です。お座り:12か月以降、ひとり歩き:30か月-50か月という報告もあります。言葉も苦手な方が多く、5歳になっても言葉が出てこないお子さんも、少なくないようです。お子さんの発達を見守りながら、療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長(身長・体重・頭の大きさ)
マラン症候群は「過成長症候群」という体が大きくなりやすい体質になります。生まれたときから10-20%の方で身長は標準範囲より大きくなります。その後も成長が早く、約半数のお子さんは標準範囲内を超えると言われます。また頭も大きい方が約70%と報告されています。定期的に成長の記録をつけることが重要です。
眼の症状
約70%の方で屈折異常(近視・遠視・乱視)が見られると報告されています。また、眼振(黒目が揺れる)も30%の方で見られます。大人になってからも視力が低下しないか注意が必要となり、定期的に眼科の先生と相談することが勧められます。
神経の症状
約60%の方で筋力が弱い「筋緊張低下」が見られ、運動発達や哺乳、呼吸の症状につながることがあります。また、約25%のお子さんで自律神経の不調をきたすことがあります。体調が悪くないのに吐いてしまう、めまいや失神などは関連した症状の可能性があります。気になる症状がある場合、担当医にご相談ください。
てんかん
半数を超える方でてんかん発作を経験します。普段の生活の中で気になる動きがあれば、担当医にご相談ください。気になる動きを動画に収めていただくと、診断のヒントとなることもあります。
行動面での課題
多くのお子さんで、不安を感じやすい、分離不安(家族と離れることが苦手)や、多動(じっとしているのが難しく、興味のあるものを見つけると急に動き出す)、集中が続きにくい「注意の散りやすさ」、聴覚過敏(大きな音が苦手)など、行動面での特徴がみられることがあります。お子さんが生活しやすいように周囲と協力し、生活環境を整えることが大切です。
骨の症状
骨の症状は合併しやすく、側弯症(背骨が横に曲がる):75%、扁平足:70%、胸郭の変形(鳩胸・漏斗胸):60%、などが見られやすい症状として知られています。症状が見られた場合は整形外科の先生と相談するようになります。
その他の症状
大動脈拡張、便秘症、停留精巣(精巣が陰嚢内に降りていない)、も見られやすい症状として知られています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。多くの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じと考えられます。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合次の妊娠でマラン症候群の体質を持つ子を授かる可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
指定難病や小児慢性特定疾患といった助成制度にも登録はされていません。伴う症状や、その程度に応じて何らかのサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。