DDX3X
遺伝子名: DDX3X
疾患名 |
DDX3X関連神経発達異常症
Intellectual developmental disorder, X-linked syndromic, Snijders Blok type
|
---|---|
登録人数 | 4~6名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
長野県立こども病院
名古屋大学医学部附属病院 小児科
兵庫県立こども病院
|
ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 小慢情報センター 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
DDX3X遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
DDX3X遺伝子異常症は、2015年にSnijders Blokらにより38人の患者さんの臨床情報が初めて報告されました。その後、現在まで200名を超える患者さんの情報が報告されています。今後も遺伝子解析技術の臨床応用に伴い、今後報告数が増えることが期待されます。DDX3X遺伝子は性別を決める染色体、X染色体上に位置しており、この遺伝子に変化が生じた場合は、主に女性で症状が出現します。稀に、男性での報告もありますが、症状が女性よりも重く、産まれてくること自体が難しくなるようです。以下女性で認める症状について記載します。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたもので、必ずしもこの疾患のすべての症状が解明されている訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。どのような症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
ほとんどの方で発達はのんびりしていると言われますが、その程度は様々です。最終的には多くの方で一人歩きが可能となり、その平均年齢は2歳(18か月~8歳)と報告されています。筋緊張(筋力)が弱くバランスを取ることが苦手な方は多いようです。また、お話に関しても苦手な方が多く、3歳以上でも言葉が出てこない方は少なくありません。初めて言葉が出るのは、平均31カ月、二語文は48カ月と報告されています。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
行動面
刺激に対する反応が鈍いお子さんが約80%と報告されています。痛みに鈍感、危険への回避行動へ時間がかかるなどの症状が知られています。
眼科
屈折異常(近視・遠視・乱視)、斜視(黒目が横にずれている)、眼振(眼が揺れる)、などを半数以上の方で合併すると言われています。小児期は“見る力”が育つ時期でもありますので、定期的に眼科の先生と相談することをおすすめします。
消化器症状
約半数の方でお腹の症状を合併すると言われています。頻度が多いものとして、慢性的な便秘、胃食道逆流、下痢や繰り返す嘔吐がよく報告されています。症状を伝えることが苦手な方では、食事や排便のたびに不機嫌など、何らかの症状で訴えている可能性があります。気になる症状については担当医にご相談ください。
神経
約20%の方で、けいれん発作がみられます。初めて発作が出現するのは10か月~3歳ごろと報告されています。発作は抗けいれん薬で対処できることが多いです。気になる動きなどがある場合は担当医にご相談ください。気になる動きがあれば、スマートフォンなどで記録あれて、診察時、担当医にみせてください。
心臓
産まれつき心臓病を持つ方は約10%です。先天性心疾患があった場合、循環器科の先生と治療方針を相談します。
思春期
一部で思春期が通常よりも早く訪れる(小学1年生頃まで)方がいます。気になる場合は、定期的な健診のなかで相談してみてください。
聴力
耳の聞こえの症状を認める方が約10%でいらっしゃいます。産まれた時のスクリーニングで大丈夫でも、中耳炎を繰り返すことにより、成長にともない聴力が低下することがあります。耳が聞こえにくそうな症状がみられた場合、担当医や耳鼻科の医師へご相談ください。
側弯(背骨が横に曲がること)
約15%の方で合併すると報告されています。定期的な外来、また学校健診などでも合わせて確認していきます。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、X連鎖遺伝というパターンで伝わることが知られています。今までの報告は全例、偶発的に生じる、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同等と考えられます。ただし、親が遺伝子の変化をもっていても、親子間で症状の種類や重さが大きく異なる場合があります。子がもつ遺伝子の変化と同じ変化を親が持っていても、親の症状は軽微であり、気づかれないことがあります。この場合、次の妊娠でDDX3X遺伝子に違いを持つ子を授かる可能性は50%と想定されます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
DDX3X遺伝子異常症は小児慢性特定疾病に指定されています。症状によって、医療費助成の対象となる可能性がありますので、担当医にご相談ください。