ASXL1
遺伝子名: ASXL1
疾患名 |
ボーリング・オピッツ症候群
Bohring-Opitz syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
兵庫県立こども病院
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
ASXL1遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
TRPM3遺伝子異常症は、1999年にBohringらにより4人の患者さんの臨床情報が初めて報告され、2011年にASXL1遺伝子が原因遺伝子であることが分かりました。現在まで50名を超える患者さんの情報が報告されています。遺伝子解析技術の臨床応用に伴い、今後報告数が増えることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
ほとんどの方で発達はのんびりしていると言われますが、その程度は様々です。言葉を通じたコミュニケーションが難しい場合も、周りの人や状況を認識し身振り手振りなど何らかの手段を使い意思表示を行っている方が少なくないようです。また、自力歩行を獲得することに大きな課題を持つ方が多いとも報告されています。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されます。
神経
半数を超える方でけいれんを経験すると報告されていますが、抗けいれん薬が有効な方が多いようです。気になる動きなどがある場合は担当医に相談ください。余裕があれば、スマートフォンなどで気になる動きを記録できると診断のヒントになります。
消化管
出生後、自分で栄養を十分に摂ることができないため、約半数の方で経管栄養(鼻から胃にチューブを入れ直接胃に栄養剤を入れる方法)が必要であったと報告されています。また、お腹の動きが悪い、胃食道逆流のため嘔吐を繰り返している方も8割以上で見られています。
成長
栄養の課題もあり、多くのお子さんで体重の増えが悪く、身長が小柄であると言われます。外来受診時に成長の記録をつけていくことが重要です。
呼吸
呼吸することを忘れてしまう・呼吸が止まってしまう(無呼吸)、肺炎を繰り返す方が約半数と言われます。消化管のところに記載しました、嘔吐を繰り返す場合、誤嚥性肺炎(吐いた物が気管に入り肺炎の原因となる)のリスクとなります。睡眠時に呼吸が止まっていないか確認いただき、風邪をひいた際などはかかりつけ医療機関で相談することが重要です。
眼科
屈折異常(特に近視)、斜視(黒目が横にずれている)の合併が多いと言われます。小児期は“見る力”が育つ時期でもありますので、定期的に眼科の先生と相談するようになります。
骨の症状
産まれてすぐには肘関節・手関節などの動きが悪い方が多いですが、年齢とともに改善していくようです。
悪性腫瘍の可能性
今まで数名、お腹の腫瘍を発症したと報告されています。患者さんの数が少なく、正確な頻度、本当に起こりやすいかの判断は難しいですが、現状はお腹の超音波検査によるサーベイランスが推奨されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。多くの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じと考えられます。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合次の妊娠でASXL1遺伝子に違いを持つ子を授かる可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病や指定難病には含まれておりませんが、伴っている症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。