ANTXR2
遺伝子名: ANTXR2
疾患名 |
ヒアリン線維腫症候群
Hyaline Fibromatosis Syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
ANTXR2遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
ヒアリン線維腫症候群(Hyaline Fibromatosis Syndrome:以降はHFSと記載します)は1873年に初例報告が行われました。以前は発症時期や重症度などから若年性ヒアリン線維腫症(Juvenile Hyaline Fibromatosis)、乳児全身性ヒアリン症(Infantile Systemic Hyalinosis)に分けられていましたが、現在は統一されHFSの診断名が使用されています。世界中から100例以上の症例が報告されていますが、日本からの報告はほとんどなく、日本人における特徴を明らかにしていくことがこれからの課題と考えられます。
どういう症状があるの?
HFSという体質を持つ方では、皮下組織を中心としてヒアリン成分が沈着し、一般的に症状は進行していきます。以下に記した症状は限られた報告をもとにしているため、すべてを網羅しているわけではありません。また、同じ体質を持つ方の中でも症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
関節拘縮(関節が固まりうまく動かせないこと)
出生時~乳児期発症のほぼ全例で合併すると言われます。手足の動かしにくさ、顎の関節が固くなった場合は食事に影響することもあります。リハビリ・療育で関節を動かしていくことが重要ですが、この体質では痛みを合併するため難しく、症状が少しずつ進んでいくため治療としては難しいことも多いようです。
皮下腫瘤
ヒアリン成分の皮下組織への沈着から腫瘤が見られます。手術で取り除くこともできますが、手術後の再発、別の部位で新たに出現することがあります。そのため、腫瘤に対する治療方針を担当医とよく相談することが必要です。
口腔内
歯肉過形成(歯肉が厚く腫れあがる)により、歯が覆われてしまうことがあります。口腔内衛生環境の悪化、食事への影響から、歯肉を切除することも検討されます。ただし、手術後も再び歯肉が腫れてしまう可能性もあり、定期的な歯科管理は必須と考えられます。また、腫瘤が口腔内に出来ることも少なくありません。
消化器
慢性的な下痢、症状が強い場合にはタンパク漏出性胃腸症(消化管から体に必須のタンパク質が漏れ出してしまう)を合併する方が約半数いると言われます。根本的な治療は難しいことも多く、便性の変化があった場合、担当医に相談ください。
感染
HFSの体質自体、またタンパク漏出性胃腸症により免疫物質が失われることで感染しやすくなる方が約3割みられます。予防的な対策を担当医と相談ください。
成長:食事、消化管の問題などから低身長、体重増加不良の方が多いと言われています。
成長:食事、消化管の問題などから低身長、体重増加不良の方が多いと言われています。
成長
食事、消化管の問題などから低身長、体重増加不良の方が多いと言われています。
側弯
関節拘縮の影響などから、まっすぐな姿勢をとることが難しく、横に背骨が曲がる方も少なくありません。整形外科の先生との相談が必要です。
発達
関節拘縮の影響から運動発達は通常よりもゆっくりしています。関節拘縮が進行性であるため、症状次第ですが出来ていたことが徐々にできなくなる方もいます(例:歩けていたのが難しくなりバギー生活になる、等)。一方、知的発達は問題ない方がほとんどです。言葉が達者な方は多い印象です。
日常生活の困る点
日常生活において『痛み』と『かゆみ』は課題となることが多いようです。痛みのためおむつ交換などの際に泣く、かゆみのために夜起きてしまう、関節拘縮のためかゆいところを掻くことができない、などが日常生活の困りごととして聞かれました(ます。と現在形でも良い気がしました)。また、顎関節の拘縮から口が十分に開けない、歯肉の腫れによりすりつぶすことができない、などから食事も制限がかかることがあるようです。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は常染色体潜性(劣性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。これは2個あるANTXR2遺伝子(自身の父親と母親から1個ずつもらってくる)の両方がうまく働かなくなった場合に症状が出ます。多くの場合、ご両親それぞれが1個ずつ遺伝子の変化を持っていると考えられます(保因者と言います:違いのないANTXR2遺伝子を1個持つため症状は出ません)。この場合、次のお子さんでHFSの体質を持つお子さんを授かる確率は25%となります。
遺伝のお話に関しては遺伝カウンセリング外来にてご相談ください。
遺伝のお話に関しては遺伝カウンセリング外来にてご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
合併している症状や、その重症度に応じて療育手帳などのサポートを受けることができる可能性もあります。社会資源の活用については担当医にご確認ください。