ABCC9
遺伝子名: ABCC9
疾患名 |
Cantú syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
愛知県医療療育総合センター中央病院
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
ABCC9遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
Cantú症候群は1982年にCantúらによる3家系の報告が初例になります。現在まで約150名以上の患者さんが報告されています。今後、遺伝子解析技術の進歩により、さらに情報が集まってくることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
乳幼児期は、筋力が弱いなどの影響から、ゆっくりと進むとされます。しかし、最終的な知的発達に遅れが生じることは少ないとされています。発達には個人差があり、必要に応じて療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長
生まれた時の体格は標準範囲より大きい方が多いようです。出生後、身長・体重は標準範囲内になりますが、約半数の方で大頭症(大きな頭)は継続すると言われます。定期的に成長記録をつけることが重要となります。
心臓の症状
半数以上の方で心臓の合併症を認めます。約60%の方に動脈管開存症(出生後に閉じるべき動脈管が閉じずに残る状態)が見られ、治療が必要となる可能性があります。また、約25%の方で心嚢水(心臓の周りに水がたまる)を合併し、量が多くなると治療が必要です。約半数の方は画像検査で心臓が大きいことを指摘されますが、多くの場合機能に問題はありません。心臓の合併症がある場合、循環器科の先生と治療方針を相談します。
血管の症状
約30%の方に大動脈の拡張が見られます。また、網膜や脳の血管が蛇行している方が報告されています。これらの所見が確認された場合は、各領域の専門医と治療方針を相談します。
お腹の症状
胃食道逆流症(げっぷや嘔吐を繰り返す)を約半数の方で認めます。また、慢性的な便秘や腸管運動の低下に悩む方もおります。気になる症状があれば、担当医へご相談ください。
全身の浮腫
約半数の方に出生時の浮腫が強く見られます。この浮腫は一旦改善しますが、思春期以降、特に足を中心に浮腫みが強くなると言われます。症状が強い場合は、弾性ストッキングなどの使用が推奨されます。気になる症状があれば、担当医にご相談ください。
神経の症状
約40%の方で片頭痛を認めます。血管の症状と関連する可能性もあるので、強い頭痛を認めた際は担当医に相談ください。また、約20-30%の方で、けいれん発作を経験します。普段の生活の中で気になる動きがあれば、担当医にご相談ください。気になる動きを動画に収めていただくと、診断のヒントとなることもあります。
骨の症状
全身レントゲン検査を行った場合、多くの方で何らかの所見を認めますが、多くは症状と関連しません。脊椎側弯症(背骨が横に曲がる)の報告もあり、気になる症状がある場合は整形外科の医師と相談します。
皮膚の症状
ほとんどの方に出生時から全身の多毛が見られます。また、体の組織を支える結合組織が弱く、皮膚に皺やたるみが目立つ方も少なくありません。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られており、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるもの、両親いずれかからの遺伝のもの、どちらかの可能性があります。約90%が新生変異であり、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じと考えられます。遺伝性の場合でも、親子間で症状の種類や重症度が大きく異なる場合があり、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合、次の妊娠でCantú症候群の体質を持つ子を授かる可能性は50%と見積もられ、お子さんでの重症度の予測はできません。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
指定難病や小児慢性特定疾患といった助成制度にも登録はされていません。伴っている症状や、その程度に応じて何らかのサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。