ZEB2
遺伝子名: ZEB2
疾患名 |
モワット・ウィルソン症候群
Mowat-Wilson syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
名古屋大学医学部附属病院 小児科
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 小慢情報センター 難病情報センター英語情報(OMIM) 日本語情報 |
ZEB2遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
モワット・ウィルソン症候群(Mowat-Wilson syndrome)は、1992年の日本小児遺伝医学会で山中先生、長屋先生により「発達の遅れ、てんかん、特徴的な顔貌を呈する患者」として4人の患者さんがはじめて報告されました。その後、1998年にモワットとウイルソンらにより論文として報告され、2001年に原因遺伝子としてZEB2遺伝子が同定されました。50,000〜70,000出生に1人の確率でモワット・ウィルソン症候群のお子さんが生まれると推定されています。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状についてあらかじめ検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしていますが、その程度は様々です。歩行ができるようになる平均は3〜4歳ですが、歩くことが難しい方もいます。言葉でのコミュニケーションは難しいことが多いですが、簡単な言葉を話す方もおり、幅があります。言葉の出ない方でも、ジェスチャーでコミュニケーションをとり、人との関わりが好きな方が多いと言われています。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長(身長・体重・頭の大きさ)
生まれたときの身長や体重は正常範囲のことが多いですが、約半数の方が出生後に身長の伸びがゆっくりになり細身になると報告されています。約80%の方が小頭(頭が小さい)になります。その方なりに成長していくため、定期的に成長の記録をつけていくことが重要となります。
腎臓・泌尿器
男性の約60%の方で尿道下裂(尿道の出口の位置がずれていること)を、約40%の方で停留精巣(精巣が睾丸内にないこと)を合併すると言われています。約25%の方で膀胱尿管逆流や水腎症、腎臓の形態の違いなどの症状を認めます。症状がある場合には泌尿器科の医師に相談します。
中枢神経(てんかん)
約80%の方でてんかんを合併すると言われています。薬が有効なことが多いですが、約25%は難治性てんかん(薬が効きにくいてんかん)です。普段の生活の中で気になる動きがあれば、担当医にご相談ください。
心臓
生まれつきの心臓病(先天性心疾患)を持つ方は約60%と報告されています。先天性心疾患があった場合、循環器科の先生と治療方針を相談します。
消化器
約40%でヒルシュスプルング病(腸管の動きが悪く腸閉塞をおこす病気)の合併がみられます。ヒルシュスプルング病のほとんどは新生児期に診断されますが、嘔吐を繰り返すなど気になる症状があれば、担当医へご相談ください。ヒルシュスプルング病がない方でも高度で難治性の便秘が約30%にみられます。慢性の便秘には内服薬や坐薬で対応します。
耳(中耳炎)
約30%の方で中耳炎を繰り返すといわれています。伝音性難聴(音を脳に伝えることができない)の原因になる可能性があります。聞こえは言葉の発達に重要であるため、気になる症状があれば担当医にご相談ください。
背骨
脊柱側弯(背骨が横に曲がる)が報告されています。側弯は成長期にも大きな課題となるため、定期的な外来受診の際に確認します。
その他の症状
口蓋裂(口の中の天井に認める裂)、眼や歯の症状なども報告されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。多くの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同等あるいは少し上がる程度と考えられます。現在、ZEB2遺伝子検査は保険収載されており病院で調べることができます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
モワット・ウィルソン症候群は指定難病や小児慢性特定疾患に登録されています。 合併している症状や、その重症度に応じて医療費助成や療育手帳などのサポートを受けることができる可能性があります。気になる方は外来受診の際に担当医に確認してください。