VPS13B
遺伝子名: VPS13B
疾患名 |
コーエン症候群
Cohen syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
愛知県医療療育総合センター中央病院
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 小慢情報センター 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
VPS13B遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
コーエン症候群は1973年に初例報告がなされ、2003年にVPS13B遺伝子(このときはCOH1遺伝子と呼ばれていました)が原因遺伝子として同定されました。約10万人に1人がコーエン症候群の体質を持って生まれてくると言われています。現在まで200例を超える患者が報告されており、世界中には1000名を超える患者がいると言われています。今後も更に情報が増えることの期待される遺伝性疾患と考えられます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
成長(身長・体重)
コーエン症候群において、幼児期頃まで体重の増えが悪いことが知られておりますが、小学校高学年以降では肥満に注意が必要です。約3人に2人で身長が低いと言われます。また、多くの方で頭は小さく(小頭症)、出生時には正常範囲内ですが、1歳頃までには気づかれ、成人期以降も続くと言われています。定期的に成長の記録をつけていくことが重要です。
発達(運動・言葉)
発達はのんびりしていますが、その程度は様々です。運動では、ほとんどの方で独歩が可能となります。運動発達の目安は平均で、寝返り7か月、お座り12か月、ひとり歩き2歳半と言われます。言葉に関しては2歳~3歳で単語が出始め、5歳以降にはお話できる方もいると言われますが、約20%の方では言葉によるコミュニケーションが難しいようです。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
眼
コーエン症候群の体質を持つ方では眼の症状へ注意が必要で、進行性の近視や網膜ジストロフィーが重要です。網膜ジストロフィーでは視力低下に加え、視野が狭くなる、明暗に対する反応が悪くなり特に暗い場所が苦手になる、などの症状が見られ、学童期以降に気づかれる可能性があります。これら以外にも様々な眼科合併症の可能性があり、定期的に眼科での評価が重要となります。
内分泌(二次性徴)
成長以外の内分泌的な課題として、約75%の方で二次性徴の発来が遅れると言われています。二次性徴が発来するタイミングは男女で異なりますが、中学生になっても兆しがない場合、遅れている可能性がありますので担当医へご相談ください。
血液(好中球減少症)
好中球減少症の頻度が高いことが知られています。好中球は体に侵入した細菌や真菌感染から体を守る働きをします。そのため、感染症や口内炎を繰り返すことがあります。症状が強い場合は好中球を増やす注射薬が使用されることもあります。
骨格
機能的には問題ありませんが、手が小さいなどの特徴があります。脊椎が側方あるいは後方に膨らむ、側弯症・後弯症の頻度が高いことも知られています。外来受診の際に定期的に確認するようになります。
その他の症状
上記以外にも多くはありませんが、てんかん、先天性心疾患の報告があります。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
コーエン症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。遺伝子はお父さんとお母さんからそれぞれ1個ずつ受け継ぎ、2個1セットで働いています。コーエン症候群では、2個あるVPS13B遺伝子の両方がうまく働かなくなった状態と考えられ、ご両親それぞれが1個ずつコーエン症候群の原因となる遺伝子の変化を持っている可能性があります(保因者と呼ばれ、VPS13B遺伝子の変化が1個だけの場合、症状は出ません)。この場合、次の妊娠・出産でコーエン症候群をもつお子さんを授かる確率は25%となりますが、症状の予測はできません。
遺伝に関する詳しいお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関する詳しいお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
コーエン症候群は小児慢性特定疾患に登録されています。伴っている症状や、その程度に応じて対象となる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。