SHANK3
遺伝子名: SHANK3
疾患名 |
フェラン・マクダーミド症候群
Phelan-McDermid syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
SHANK3遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
フェラン・マクダーミド症候群の原因遺伝子は22番染色体にあるSHANK3遺伝子になります。原因として、22番染色体の一部がSHANK3遺伝子を含む形で欠けて失われる場合(欠失型)と、SHNAK3遺伝子に刻まれた情報が変化してうまく働かなくなる場合(点変異型)とがあります。染色体を細かく調べられるようになったり(マイクロアレイ染色体検査の保険収載化)、遺伝子を調べる技術も進歩したことにより報告される患者さんの数は増えています。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。これらの情報は、どのような症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。2023年に健康の指標となるガイドラインが、英語ではありますが発表されています。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしていると言われますが、その程度は様々です。平均では寝返り8か月、はいはい16カ月、ひとり歩き3歳という報告があります。ただし筋力が弱いためバランスを取るのが苦手であり、歩き方はぎこちない方が少なくありません。また言語面は運動面よりも症状が出やすいと言われています。喃語は周りのお子さんと同じ時期に始まりますが、幼児期以降は言葉の発達の遅れが目立つようになります。特に言葉を理解するよりも、お話する方が苦手と言われます。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
けいれん
約半数の方でけいれん発作を経験し、特に熱性けいれんが多いと言われていますが、熱がない時のけいれん:てんかん発作となる方もいます。お子さんを見ていく中で、気になる動きなどがある場合は担当医に相談ください。気になる動きがあれば、スマートフォンなどで記録されて、診察時に担当医へ見せてください。
行動面
視線が合いにくい、同じような動きを繰り返したがる(口をもぐもぐさせるなど)、感覚過敏などの特徴を持っている方が多いようです。コミュニケーション手段や、お子さんの好きな感覚を一緒に考えていくことが重要となります。
退行(出来ていたことが出来なくなる)
約半数の方で退行を経験すると言われます。退行により歩けていた方が歩けなくなる、お話しできていた方がお話できなくなる、可能性があることを意味します。早い場合には4歳頃から、また思春期以降にも症状として出てくると言われています。幼児期に見られたものは、時間をかけて回復することもあるようですが、その後も続いてくものかは慎重に見ていく必要があります。
精神症状
思春期以降では、上の退行に加えて精神科の先生に相談するような症状を合併しやすいと言われています。気分の浮き沈みが激しい、緊張で固まってしまう、幻聴や幻覚、などが報告されています。日常生活の様子が大きく変わるようなことがあれば、担当医にご相談ください。
消化器症状
胃食道逆流症、繰り返す嘔吐が約30%の方で見られると言われています。また、便秘も起こりやすい症状のひとつです。胃食道逆流症は慢性的な咳できづかれることもあります。気になる場合は担当医にご相談ください。
腎臓
約40%の方で産まれつきの腎臓の形の違いがあると言われています。一度、お腹の超音波検査で評価してもらうことを推奨します。
心臓
産まれつきの心臓病を持つ方は約20%と言われます。先天性心疾患があった場合、循環器科の先生と治療方針を相談します。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。点変異型では多くの場合、偶発的に生じた新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同等と考えられます。一方、欠失型の一部では、ご両親のいずれかに、フェラン・マクダーミド症候群のお子さんを授かりやすい染色体の違いが認められることがあります。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
2024年1月時点では小児慢性や指定難病には登録されていません。伴っている症状や、その程度に応じて療育手帳によるサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。