QRICH1
遺伝子名: QRICH1
疾患名 |
Ververi-Brady syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 |
QRICH1遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
Ververi-Brady症候群は、2018年にVerveriらによって初めて報告されました。QRICH1遺伝子に変化があり、のんびりした発達など共通の特徴を持つ3名の患者さんが紹介されました。現在まで約50名の患者さんが報告されており、今後遺伝子解析技術の進歩により、さらに情報が集まってくることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、体つきの特徴など、注意が必要な症状がいくつか報告されています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ず認めるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
約7割の方で発達がのんびりしていると言われますが、その程度は様々です。運動の発達では、お座りができるようになるのが7〜12カ月ごろ、ひとり歩きができるようになるのが16〜30カ月ごろと報告されています。言葉については、最初の言葉は多くのお子さんと同じように1歳半くらいまでに出ることが多いですが、言葉によるやりとりが苦手な方もいます。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長
生まれた時の体格は標準範囲内の方が多いようです。出生後は、約30%の方で小柄(身長・体重が標準範囲を下回る)と言われています。定期的に成長の記録をつけていくことが重要となります。
筋緊張低下(筋力が弱い)
約40%の方で筋緊張低下を持ち、運動発達に影響したり、約30%の方では哺乳障害(飲むことが苦手)の原因となります。長期にわたり経管栄養(鼻から胃にチューブを入れて、直接栄養する)を必要とする方は多くないようですが、哺乳に関してサポートや工夫が必要となることがあります。
行動面での課題
約40%の方で多動(じっとしていることが難しい、興味のあるものを見つけると急に動き出すなど)、注意散漫、周りとのコミュニケーションが苦手、などの課題を持つと言われます。お子さんが生活しやすいように周囲と協力し、生活環境を整えることが大切です。
てんかん
20%の方ではてんかん発作を経験します。てんかん発作は抗てんかん薬で発作をコントロールできる方が多いですが、中には複数の抗てんかん薬でも発作のコントロールが難しい方もいます。普段の生活の中で気になる動きがあれば、担当医にご相談ください。気になる動きを動画に収めていただくと、診断のヒントとなることもあります。
背骨の症状
約20%の方で、脊椎側弯症(背骨が横に曲がる)を合併すると言われます。定期的な外来受診などの際に確認し、症状が現れた場合には整形外科への相談が勧められます。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この疾患では「常染色体顕性遺伝(優性遺伝)」という遺伝形式が知られています。親から受け継いだ2つの遺伝子のうち1つに変化(変異)があると発症します。しかし、実際の患者さんの90%以上では「新生変異(de novo変異)」と呼ばれる、精子や卵子がつくられる過程、あるいは受精後まもない時期に偶然生じた遺伝子の変化が原因で起きています。この場合、親の遺伝的な影響はなく、「誰のせいでもない」自然発生的な変化と考えられます。次のお子さんにも同じ遺伝子の変化がみられる確率(次子再発率)は一般的な頻度と同程度か、やや高い程度と考えられます。一方、全体の約10%ですが、親のどちらかに同じ遺伝子の変化があっても、それに気づかれなかった報告例があります。同じ遺伝子の変化があっても親の症状が軽く目立たなかった可能性があります。この場合、次に授かるお子さんが同じ遺伝子の変化をもつ確率は50%ですが、症状の有無や重さは個々に異なるため、正確に予測することはできません。詳しく知りたい、ご不安がある場合は、遺伝カウンセリングでご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
指定難病や小児慢性特定疾患といった助成制度にも登録はされていません。伴う症状や、その程度に応じて何らかのサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。