MTOR
遺伝子名: MTOR
疾患名 |
スミス・キングスモア症候群
Smith-Kingsmore syndrome
|
---|---|
登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
名古屋大学医学部附属病院 小児科
|
ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 |
MTOR遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
スミス・キングスモア症候群は、2013年にSmith先生、Kingsmore先生達によって初めて報告されました。頭が大きい(大頭症)ことや、けいれん発作などの症状があるお子さんの遺伝子を詳しく調べたことで発見され、MTOR遺伝子の変化を原因とすることが分かっています。現在まで約70名の患者さんが報告されています。今後、遺伝子解析技術の進歩により、さらに情報が集まってくることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしており、その程度は様々です。運動発達の目安は、寝返り6か月以降、お座り12~18か月、ひとり歩き2歳~8歳と言われます。多くの方が歩けるようになりますが、車いすが必要となる方もいます。言葉の発達もゆっくりの方が多く、初めての言葉は2~4歳と報告されていますが、言葉でのコミュニケーションが難しい場合もあり、その場合はサイン言語や絵カードなど、他の方法でのコミュニケーションを要する方もいます。発達を見守る中で療育(発達支援)が提案されることもあります。
大頭症(頭が大きい)
大頭症がスミス・キングスモア症候群の特徴と言われます。身長や体重は平均か、平均より若干大きい方が多いとされます。定期的に成長の記録をつけることが重要となります。
神経の症状
半数以上の方で筋緊張低下(筋力が弱い)を合併し、体の動きや発達に影響する可能性があります。約半数の方にけいれん発作が見られます。最初の発作が起きる年齢や発作のパターンは様々です。抗けいれん薬で発作を抑えることを目指しますが、複数のお薬でも完全に止めることが難しい方もいます。普段の生活の中で気になる動きがあれば、担当医にご相談ください。余裕があれば動画に撮っていただけると、診断のヒントとなることもあります。
睡眠
約半数の方で眠りが浅い、早朝覚醒(起きる時間が早すぎる)、睡眠のリズムが作りづらいなど、睡眠の課題を持っています。気になる症状があれば、担当医へご相談ください。
眼の症状
斜視(黒目の位置がずれる)、近視・遠視など、見る力が育ちにくいなど、半数以上の方で何らかの眼の症状を持つと言われます。小児期は“見る力”が育つ時期でもあり、気になる症状があれば眼科の先生と相談します。
お腹の症状
30-50%の方で飲んだり食べたりすることが苦手、慢性的な便秘症の症状を持つと報告されています。気になる症状があれば、担当医へご相談ください。
骨の症状
脊椎側弯症(背骨が横に曲がる)を合併する方もいます。定期的に確認を行い、気になる症状があれば、整形外科の医師と相談するようになります。
その他の症状
感染症にかかりやすい、先天性心疾患(生まれつきの心臓病)、食べ過ぎてしまうことによる肥満、を持つ可能性が高いと指摘されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)というパターンで伝わります。約90%の症例が新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるもの報告されています。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じ程度と考えられます。ただし、遺伝子の変化により発症する症例では、親子間で症状の種類や重症度が大きく異なる場合があり、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合、次の妊娠でスミス・キングスモア症候群の体質を持つ子を授かる可能性は50%と見積もられ、お子さんでの重症度の予測はできません。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
指定難病や小児慢性特定疾患といった助成制度にも登録はされていません。伴っている症状や、その程度に応じて何らかのサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。