KDM5C
遺伝子名: KDM5C
疾患名 |
Intellectual developmental disorder, X-linked syndromic, Claes-Jensen type
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
KDM5C遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
発達遅滞は出生児の約2~3%に見られ、男児の方が若干多いことが知られています。これは男女において構成の違うX染色体に位置している遺伝子に違いが起こった場合、男児の方が影響を受けやすくなるためです。発達遅滞を持つ男児の8-12%はX染色体に位置する遺伝子の違いが原因を原因とし、KDM5C遺伝子はそのうち約1-2%を占めると見積もられています。2000年Claesらによる症候群性の発達遅滞・知的障害(のんびりした発達)として初例報告が行われ、2005年JensenらによりKDM5C遺伝子が原因遺伝子として同定されました。現在までの報告数は限られていますが、網羅的遺伝子解析技術の臨床応用に伴い、今後報告数が増えることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしていると言われます。発達の目安として歩き始め24か月前後、始語36か月前後と記載されているものもあります。成人例の報告が限られているため、成人期の生活については、まだ分からないことが多く、患者さんご家族と一緒に考えていく大事なテーマになります。のんびりした発達に対し、療育(発達支援)が検討されます。
行動
多くの方で自閉傾向など、本人独自の行動特性をお持ちのようです。非常に人懐っこい性格が前面に来る方も10%程度でいるようです。本人の特性に合わせた対応が重要となります。
成長
80%を超える方に低身長を合併すると言われます。成長の足跡をつけていき、成長率の低下(成長曲線の伸び幅より小さくなること)が見られないか確認していきます。
眼の症状
約80%の方で眼科合併症を認めます。その中には斜視(両眼が同じ方向をみていないこと)や、屈折異常(近視・遠視・乱視など)が含まれます。3歳くらいまでには一度、眼科の先生に診ていただきます。
歯科
約半数の方で何らかの歯科合併症を起こすと報告されています。自治体の健診でも相談できますが、かかりつけの歯科医の先生を探すことも検討ください。
消化器症状
50%以上の方で胃食道逆流症、便秘など消化器症状を認めることがあります。日常生活の中で気になる症状がある場合、担当の先生とご相談ください。
けいれん
約30%の方で合併すると言われます。けいれんには様々なパターンがありますので、気になる動きがあれば担当の先生にご相談ください。余裕があればその動きをスマートフォンの動画機能に納めていただくと、診断のヒントになることもあります。
思春期
小児期を超える年齢の方の情報は分かっていないことも多いですが、海外の家族会からの情報によると思春期早発(予定の年齢よりも早く思春期が来ること)の方もいるようです。成長と合わせて評価していくテーマになります。
難聴
海外の家族会からの情報では、女性の約半数で合併すると報告されています。男性には少ないようです。新生児期に聴力スクリーニングも行っていますが、音の反応が悪いなどあれば、担当医に教えてください。
アレルギー
海外の家族会から女性の約半数、男性の約2割の方で合併すると報告されました。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は男女で構成の違うX染色体(女性:X染色体が2本、男性:X染色体とY染色体が1本ずつ)に関連したX連鎖遺伝というパターンで伝わることが知られています。X染色体にあるKDM5C遺伝子は女性で2個、男性で1個持っています。KDM5C遺伝子がうまく働かなくなった場合、女性だともう片方のKDM5C遺伝子がある程度その機能を補ってくれるため、女性より男性で症状が強く出やすくなります。KDM5C遺伝子異常症は新生変異(偶然に起きたもので誰のせいでもない)、男性患者の母親が遺伝子の違いを持っている場合(保因者)があります。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は一般頻度と同じと考えられます。一方、母親が保因者の場合、50%の確率で違いを持った遺伝子がお子さんに伝わりますが、症状の程度は症例や性別により様々です。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
合併している症状や、その重症度に応じて療育手帳などのサポートを受けることができる可能性もあります。気になる方は外来受診の際に担当医に確認してください。