HNRNPU
遺伝子名: HNRNPU
疾患名 |
Developmental and epileptic encephalopathy 54
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
HNRNPU遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
HNRNPU遺伝子異常症は、2013年にCarvillらによりHNRNPU遺伝子に変化を持つ33歳の患者さんの臨床情報が初めて報告されました。その後、現在まで約100名の患者さんの情報が報告されています。最初の患者さんが報告されてから時間が経っておらず情報は限られていますが、遺伝子解析技術の臨床応用に伴い、今後報告数が増えることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
ほとんどの方で発達はのんびりしていると言われます。特にコミュニケーション面が影響を受けやすいと言われており、大きくなっても言葉によるコミュニケーションが難しい方も少なくありません。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
神経
90%を超える方でけいれん・てんかん発作を持ち、そのほとんどの方で2歳のお誕生日までに初めての発作を経験すると報告されています。1種類の抗けいれん薬で発作への対処が可能な方もいますが、複数種類の抗けいれん薬が必要、それでも発作を抑えることが難しい方もいらっしゃいます。気になる動きがある場合は担当医に相談ください。気になる動きをスマートフォンなどで記録できると診断のヒントになります。
哺乳が苦手
約半数を超える方で産まれた時から哺乳(ミルクを飲むこと)が苦手であり、中には経管栄養(口や鼻から胃にチューブを入れ、ミルクなど栄養を胃に直接入れる方法)が必要である方もいます。経管栄養は成長とともに必要なくなる方もいますが、中には長い間の課題となる方も報告されています。栄養方法に関しては担当医や療育の方と相談し慎重に進めていくことが重要です。
成長
約半数の方で身長や体重は小柄と報告されています。外来受診時に成長の記録をつけていき、成長に影響を及ぼす他の原因がないか調べることが重要となります。
眼科
斜視(黒目が横にずれている)を合併している方が約30%と言われます。それ以外に、屈折異常(近視・遠視・乱視)を持つ方も報告されています。小児期は“見る力”が育つ時期でもありますので、定期的に眼科の先生と相談するようになります。
呼吸
呼吸の症状を持つ方も報告されています。痛い処置などの際に呼吸を止めてしまったり、過換気(呼吸数が多い)と無呼吸(呼吸を止める)ことを繰り返すなど、呼吸のリズムを一定に保つ方がいらっしゃるようです。呼吸のリズムは特に睡眠時に乱れやすく、その影響で十分な睡眠がとれない可能性があります。
心臓
約30%の方で先天性心疾患(産まれつきの心臓病)を持つと言われます。先天性心疾患があった場合、循環器科の先生と治療方針を相談します。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。多くの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じと考えられます。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合次の妊娠でHNRNPU遺伝子に違いを持つ子を授かる可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病や指定難病には含まれておりませんが、伴っている症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。