ATP6V1A
遺伝子名: ATP6V1A
疾患名 |
発達性てんかん性脳症93
Developmental and epileptic encephalopathy 93
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
名古屋大学医学部附属病院 小児科
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
ATP6V1A遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
ATP6V1A遺伝子の変化によるDevelopmental and epileptic encephalopathy 93は2018年にイタリアのFassio先生たちが4名の患者さん情報を報告したのが初めてです。現在まで国内外から約30例の報告があり、遺伝子解析技術の臨床応用に伴い、今後報告数が増えることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
てんかん
80%以上の方でけいれん・てんかん発作を発症すると言われており、この症候群において重要な症状となります。1歳前後で最初の発作をけいれんする方が多いようですが、生後2か月で最初の発作が出現した方、2歳~3歳で最初の発作が出た方の報告もあります。けいれん発作を有している方の多くは、抗てんかん薬を用いてもコントロールが難しく、複数のお薬を使用しても発作が継続している方も少なくありません。頻回の発作は発達への影響も懸念され、神経内科の医師と治療を行うことが重要です。また、普段の生活の中で気になる動きがあれば、担当医にご相談ください。
発達
発達はのんびりしていますが、その程度は様々です。運動面に関しては、独歩を行っている方もおりますが、症状が非常に強い方では自力での運動が難しい方もいらっしゃいます。言葉でのコミュニケーションも苦手な方が多く、簡単な単語でやりとりをされる方もおりますが、言葉を用いたコミュニケーションが難しい方も少なくはないようです。また、現在まで報告数が少なく、この年齢・月齢でこうゆうことが出来る、という目安となるデータは集まってきていません。前述した、てんかんのコントロールが長期間にわたって難しい場合、発達に影響することもあります。発達を見守る中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
その他の神経の症状
産まれてすぐに気づかれる症状として、筋緊張低下(筋力が弱い)があり約70%の方で合併すると報告されています。筋緊張低下により、哺乳が苦手、不安定な呼吸、のんびりした発達の原因となります。また、小頭症(頭が小さい)を持っている方も約40%でいらっしゃいます。こちらは定期的に記録をつけていくことが重要になります。
歯の症状
約半数の方で、何らかの歯の症状を有していると言われます。歯の生え初めの時期に関する情報は現在のところ知られておりませんが、エナメル質(歯の固い部分)の弱い方が多く虫歯への対策が必要であり、また歯並びが悪いこともあるようです。
その他の症状
視力の症状、運動の際に指が震えてしまう、経管栄養(鼻から胃に入れたチューブでの栄養)などが比較的頻度の高い合併症として報告されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)というパターンで伝わることが知られています。多くの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同等あるいは少し上がる程度と考えられます。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合次の妊娠でこの体質を持つ子を授かる可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病や指定難病には含まれておりませんが、伴っている症状や、その程度に応じ何らかのサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。