KDM6A
遺伝子名: KDM6A
疾患名 |
歌舞伎症候群
Kabuki syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | – |
関連情報 |
KDM6A遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
1981年に日本人医師の新川・黒木らが最初の症例報告を行ったことから、Niikawa-Kuroki症候群とも言われます。日本人では32,000出生に1人と推定されています。KMT2D遺伝子・KDM6A遺伝子という2つの遺伝子が歌舞伎症候群の原因遺伝子として報告されています。
どういう症状があるの?
この体質をお持ちの方では、成長や発達、体の特徴などについて、気をつけたほうがよい特徴や症状がいくつか知られています。以下にご紹介する内容は、限られた報告や研究をもとにまとめられた情報で、すべての症状を網羅したものではありません。あくまで「この体質の方にみられることがある傾向」としてご覧ください。また、同じ体質を持っている方でも、症状のあらわれ方や程度には個人差があります。すべての方に同じような症状が出るわけではありません。この情報は、「どんな症状が出る可能性があるのか」を事前に把握しておくためや、実際に見られた症状がこの体質と関係しているかを医師と一緒に考える際の参考として役立ててください。
気をつけた方がよい症状
発達
90%以上の方で発達に課題を抱えていると言われますがその程度は様々です。発達に大きな課題を指摘されず、成人されている方もいます。一人歩きは平均20カ月(15~30カ月)、発語は平均21カ月(10~30カ月)と報告されています。運動面とともにお育ちを確認する経過の中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長
出生時の体格は標準範囲内であることが多いですが、出生後は低身長が課題となります。外来受診時や健診の際に成長の記録をつけていくことが重要です。
心臓
約半数の方に産まれつきの心疾患(先天性心疾患)を認めると報告されています。今まで心臓の検査をしたことがない方は担当医に相談ください。先天性心疾患が見つかった場合、循環器科の医師と治療方針を相談します。
耳鼻科
聴こえの症状を持つ方は約50%と言われます。産まれつきのこともありますが、慢性的に中耳炎を繰り返し、結果として聴こえに影響を及ぼすこともあります。定期的な耳鼻科への通院、感冒時の対応など、かかりつけの耳鼻科を持っておくことが重要となります。
神経
10-40%の方でけいれんを合併すると報告されています。何か気になる動きがあればご相談ください。余裕があればスマートフォンなどで動きを記録できると、より情報量が増えます。
眼科
眼瞼下垂(まぶたが黒目にかかるくらい下がる)、斜視、白内障など眼の合併症が知られています。また、就寝中に眼が完全に閉じ切れない影響で眼が赤くなる、涙が多くなる、こともあります。定期的に眼科の先生にかかることも検討します。
腎泌尿器
産まれつきの腎臓の形の違い、停留精巣、尿道下裂、膀胱尿管逆流、外性器異常など腎臓・泌尿器系の症状を約25%の方で合併します。お腹の超音波検査での評価も検討されます。
消化器
鎖肛(産まれつきお尻の穴が閉じている)、横隔膜ヘルニアの合併が知られています。また、鎖肛までではないにしても、便秘で悩んでいる方は多いことが知られています。
免疫
易感染性(風邪をひきやすい)、貧血や血小板(血を止める働き)を合併する方も報告されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は男女で構成の違うX染色体(女性:X染色体が2本、男性:X染色体とY染色体が1本ずつ)に関連したX連鎖遺伝というパターンで伝わることが知られています。X染色体にあるKDM6A遺伝子は女性で2個、男性で1個持っています。KDM6A遺伝子では新生変異(偶然に起きたもので誰のせいでもない)が多いと言われますが、男性患者の母親が遺伝子の違いを持っている場合(保因者)があります。理論上は女性患者の母親が遺伝子の違いを持っている場合もありますが、その割合は非常に低いと考えられます。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は一般頻度と同じと考えられます。一方、母親が保因者の場合、50%の確率で違いを持った遺伝子がお子さんに伝わりますが、症状の程度は症例や性別により様々です。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群)、指定難病に指定されています。重症度が国の認める基準を超えた場合に対象となり、申請には医師の診断書が必要となるため、担当医に相談ください。その他、合併している症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる可能性があります。 社会資源の活用については担当医にご確認ください。