FOXP1
遺伝子名: FOXP1
疾患名 |
Intellectual developmental disorder with language impairment with or without autistic features
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 |
FOXP1遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
FOXP1遺伝子の変化と症状との関連が初めて報告されたのは、2010年になります。のんびりした発達などを持つ100名以上の患者さんに遺伝子を調べる研究を行い、原因遺伝子として同定されました。現在まで世界中から200名を超える患者さんが報告され、遺伝子解析技術の進歩により、さらに情報が集まることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、体つきの特徴など、注意が必要な症状がいくつか報告されています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、すべての症状を網羅した訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ず認めるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしていることが多いと言われ、その程度は様々です。お座り:9~12か月、ひとり歩き:21か月(13か月~38か月)と報告され、ほとんどの方で一人歩きは可能となります。言葉についても苦手な方が多く、最初の言葉は27か月(14~42か月)と報告され、言葉によるコミュニケーションが可能となる方もいますが、
ジェスチャーなど他の手段に頼る方も少なくありません。療育(発達支援)が提案されることもあります。
ジェスチャーなど他の手段に頼る方も少なくありません。療育(発達支援)が提案されることもあります。
行動面での課題
多くのお子さんに、同じ行動を何度も繰り返す「反復行動」や、興味が特定のものに偏ったり、音や光、触った感覚などに敏感だったりする「感覚過敏」、大きな音が苦手な「聴覚過敏」や、じっとしているのが難しく、興味のあるものを見つけると急に動き出すといった「多動」、集中が続きにくい「注意の散りやすさ」など、行動面での特徴がみられることがあります。お子さんが生活しやすいように周囲と協力し、生活環境を整えることが大切です。
筋緊張低下(筋力が弱い)
約半数の方で筋緊張低下を合併し、運動発達に影響する可能性があります。筋緊張低下が口周りの筋肉に影響した場合、哺乳障害(飲むことが苦手)、滑舌が悪い、よだれが止まりにくい、などの原因となります。経管栄養(鼻から胃にチューブを入れて、直接栄養する)を必要とする方は多くないようですが、哺乳に関してサポートや工夫が必要となることがあります。
眼の症状
約半数の方で屈折異常(近視・遠視・乱視)、斜視(黒目の位置がずれる)、眼振(黒目が揺れる)、など眼の症状を合併します。定期的に眼科の先生と相談することが勧められます。
心臓の症状
約4人に1人の割合で心室中隔欠損症・心房中隔欠損症(心臓の壁に穴が開いている)などの心臓の合併症を認め、手術などの治療が必要となる方もいます。心臓の合併症がある場合、循環器科の医師と治療方針を相談します。
お腹の症状
慢性的な便秘や、胃食道逆流症はFOXP1遺伝子に変化をお持ちの方では見られやすい症状となります。普段の生活の中で気になる様子があれば、担当医にご相談ください。
てんかん
10%の方ではてんかん発作を経験します。てんかん発作は抗てんかん薬で発作をコントロールできる方が多いといわれています。普段の生活の中で気になる動きがあれば、担当医にご相談ください。気になる動きを動画に収めていただくと、診断のヒントとなることもあります。
その他の症状
停留精巣(陰嚢内に精巣が降りていない)、腎臓の形の違い、などは比較的頻度の高い合併症と言われます。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。多くの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じと考えられます。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合次の妊娠でFOXP1遺伝子に違いを持つ子を授かる可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
指定難病や小児慢性特定疾患といった助成制度にも登録はされていません。伴う症状や、その程度に応じて何らかのサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。