USP9X
遺伝子名: USP9X
疾患名 |
Intellectual developmental disorder, X-linked 99
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
愛知県医療療育総合センター中央病院
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
USP9X遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
USP9Xは男女で構成の違うX染色体上に位置しており、この遺伝子に変化が生じた場合は男女で症状が異なり、今回は主に女性患者さんの症状について記載しています。2014年、女性のUSP9X遺伝子異常症(以下はMRXF99と記載します)の患者さんが初めて報告されました(男性は2009年)。現在まで、世界中で50例程度報告されています。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、起こりうるすべての症状を網羅している訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ず持つとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
ほとんどの方で発達に課題を抱えていると言われますがその程度は様々です。2歳前後で歩き始め、言葉を出す方もいますが、小学校入学時でも車いす・バギーを使う、単語が出ずにサイン言語を使う、方もいます。お育ちを確認する経過の中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長
約半数の方で低身長を合併します。ただし、小児期に伸びが止まることはなく、お子さんのペースで大きくなっていきます。外来受診時や健診の際に成長の記録をつけていくことが重要です。
眼の症状
斜視、屈折異常(近視、遠視、乱視)、白内障の合併は約7割と低くありません。定期的に眼科の先生と相談しながら、視力を育てていくことが重要と考えられます。
心臓
産まれつきの心臓病を約半数の方で合併すると報告されています。心臓評価に関しては担当医の先生と相談してください。
骨の症状
側弯(背骨が横に曲がること)を約60%で合併すると報告されています。症状が見られた場合は整形外科の先生と相談するようになります。また、多指(指が多いこと)を合併している方もいるようです。
難聴
程度の差はありますが、耳の聞こえに課題を持つ方が半数以上いるようです。日常生活の中で聞こえが気になる場合、担当医にご相談ください。
口蓋裂
約30%の方で合併すると言われます。出生時に診断され、通院中の方もいらっしゃると思います。ただし粘膜下口蓋裂という、診断が難しいパターンもあり、鼻声・食べ物が鼻から出てくる、などの症状が見られることもあります。
鎖肛(おしりの穴が開いていない状態)
約30%の方で合併し、手術が必要な方もいます。手術を要しないまでも便秘が健康管理の課題となる方もいます。
腎臓
水腎症:腎臓が腫れている、重複尿管:おしっこを集める管が多い、など産まれつきの腎臓の症状を約2割の方で合併します。一度、腹部エコーでの評価も検討されます。
けいれん
約10%の方で合併すると言われます。けいれんには様々なパターンがありますので、気になる動きがあれば担当の先生にご相談ください。余裕があればその動きをスマートフォンの動画機能に納めていただくと、診断のヒントになることもあります。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は男女で構成の違うX染色体(女性:X染色体が2本、男性:X染色体とY染色体が1本ずつ)に関連したX連鎖遺伝というパターンで伝わることが知られています。MRXF99では女性の片方のX染色体が変化を持った場合に症状が出現し、男性のX染色体が違いを持っていた場合は非常に重症となり産まれてくることが難しいようです。USP9X遺伝子異常症は、ほとんどの症例で新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じ程度と考えられます。ただし、患者さんの母親の中にはお子さんと同じ遺伝子の違いを持っているものの症状を持たない方が数%いると報告されています。この場合、次のお子さんに違いを持った遺伝子が伝わる可能性は50%となります。また、MRXF99の体質を持つ方は50%の確率で違いを持った遺伝子がお子さんに伝わりますが、症状の程度は症例・性別により様々です。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病、指定難病(先天異常症候群)には指定されていません。合併している症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる可能性があります。社会資源の活用については担当医にご確認ください。