TCOF1
遺伝子名: TCOF1
疾患名 |
トリーチャー・コリンズ症候群
Treacher Collins syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
TCOF1遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
トリーチャー・コリンズ症候群は1889年に眼科医であるEdward Treacher Collinsにより初めて報告されました。日本での報告も含めて約50,000出生に1人と推定されています。現在までTCOF1遺伝子を含め、4つの遺伝子がトリーチャー・コリンズ症候群の原因遺伝子として報告されています。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、からだつきの特徴を含めて、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられているため、起こりうる症状のすべてを網羅している訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずしも持つとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
顔面骨
トリーチャー・コリンズ症候群の原因遺伝子は、発生段階において頭蓋骨と顔の骨を形作ることと関連しています。これらの遺伝子がうまく働かなくなり顔の骨の形成に影響を与えると、程度の差はありますが、90%程度の方で特徴がみられることが知られています。小顎症(小さい顎)は呼吸・食事に影響することがあります。
耳の聞こえ
90%以上の方で難聴(伝音性難聴:音を脳に伝えることができない)を合併すると報告されています。顔面骨形成の影響により、耳小骨(鼓膜の奥で音を増幅して脳に伝える際に重要な骨)の低形成、外耳道(耳の穴)が閉じている、などが原因となります。新生児聴力スクリーニングでの結果が参考となります。
中耳炎
中耳炎を反復する方が少なくありません。耳の聞こえのことと合わせて、相談できる耳鼻科の窓口を作っておくことが重要となります。
眼の症状
下眼瞼コロボーマ(下まぶたが一部欠けている)を約60%の方で合併します。この場合、眠るときに眼が完全に閉じないことがあり、眼の乾燥や角膜が傷つくことがあります。その他、鼻涙管狭窄、屈折異常など、眼の症状を合併することがあり、定期的に眼科の先生と相談しながら、視力を育てていくことが重要と考えられます。
呼吸・食事
小顎症などの影響により、飲むのが上手ではなく経管栄養が必要な方が約30%、気管切開など何らかの呼吸サポートを要する方が約20%と言われます。これらの症状は主に新生児期から見られますが、夜間のいびきなど呼吸が苦しそうなサインがないかを、時々確認してください。
歯科・口腔外科
口蓋裂(21%)、歯の本数が足りない(33%)と報告されています。また、他にも何らかの歯科的な合併症を持つ方が約60%と言われています。小顎症を持つ場合、口が大きく開かずに歯の衛生管理が難しいことも少なくないため、定期的に歯科へかかることが重要となります。
心臓
産まれつきの心臓病を合併する方が約10%と言われています。今まで一度も心臓の検査を行われていない場合は担当の先生にご相談ください。
見られにくいと考えられている症状
成長・発達 成長(身長や体重)、発達は年齢相応に進んでいくと考えられます。ただし、耳の聞こえの影響で言葉はゆっくりしている方も少なくありません。言葉の発達は耳鼻科や言語聴覚士とも相談していきます。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質の多くは常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。約60%の方では新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じ程度と考えられます。一方、約40%の方では、ご両親のいずれかが同じ遺伝子の違いを持っていると報告されています。既にご両親が医療機関に通院中、もしくは非常に軽微な症状のため気づかれていない可能性があります。この場合、次のお子さんがトリーチャー・コリンズ症候群の体質を持つ可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群)、指定難病には指定されていません。合併している症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる可能性があります。社会資源の活用については担当医にご確認ください。