NTRK1
遺伝子名: NTRK1
疾患名 |
先天性無痛無汗症
Insensitivity to pain, congenital, with anhidrosis
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 小慢情報センター 難病情報センター英語情報(OMIM) 日本語情報 |
NTRK1遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
先天性無痛無汗症(congenital insensitivity to pain with anhidrosis:以降はCIPAと記載します)は、1951年に初めて報告され、1996年NTRK1遺伝子の変化により発症することが分かりました。CIPAは遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーという疾患グループに該当し、神経の形成が影響を受けることにより、温度や痛み、自律神経機能が弱まることで症状をきたします。日本における患者数は130-210名程度、頻度は60-95万人に1人と考えられています。
どういう症状があるの?
この体質では痛みを感じないこと(無痛症状)と汗をかかないこと(無汗症状)、自律神経症状により、いくつかの注意する症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、起こりうるすべての症状を網羅している訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
無痛症状
血液検査や予防接種の際に、針の痛みに対する反応が乏しい(泣かない)ことをきっかけに気づかれる可能性があります。歯が生えると、ほぼ全員が口の中や指に噛み傷を作るようになります。口の中の噛み傷への対応としては、歯科・口腔外科に紹介して保護プレートを作ることがあります。
歩き始めると骨折、捻挫、脱臼の反復に注意が必要です。これは痛みを感じることが苦手なため強い力をかけてしまうことが原因と言われます。ケガをした場合も痛みを感じないため発見が遅れ、安静を保てないために回復が遅れます。長期間放置された場合、骨に変形が残り運動に影響が及ぶ可能性があります。普段の生活の中で、足などが腫れていないかなど確認することが重要になります。
歩き始めると骨折、捻挫、脱臼の反復に注意が必要です。これは痛みを感じることが苦手なため強い力をかけてしまうことが原因と言われます。ケガをした場合も痛みを感じないため発見が遅れ、安静を保てないために回復が遅れます。長期間放置された場合、骨に変形が残り運動に影響が及ぶ可能性があります。普段の生活の中で、足などが腫れていないかなど確認することが重要になります。
無汗症状
汗は体温調整機能を持つため、無汗症状として体温管理が難しくなります。新生児期~乳児期には、原因不明の発熱を繰り返すことがあります。夏場など環境温が高くなるような状況での発熱、冬場など環境温が低くなる状況においては熱を逃しやすく、体温が低い状態(低体温)になることもあります。体温管理については衣服や周りの温度を適切に調整することが重要です。また、汗をかかないと皮膚が乾燥して外敵から皮膚を守るバリア機能が低下するため、皮膚の感染症を起こしやすくなります。熱さを感じにくいため、熱傷にも注意しましょう。
発達
程度の差はありますが、のんびりしている方も多いと言われます。運動発達に関しては、歩き始め18.5ヶ月(11-24ヶ月)とややのんびりしている傾向があります。言葉に関しては、発語がゆっくりの方もいらっしゃいます。幼児期〜学童期に落ち着きの無さや衝動的な行動、不注意、こだわり、感覚の過敏などが問題になる方もいます。これら発達の特徴に対して、療育(発達支援)が検討されます。
神経
体温上昇による熱性けいれん、頻度は多くありませんが脳症を起こすことがあります。
眼の症状
学童期になると、ドライアイによって眼の表面に細かい傷がつく傾向があるため、眼科を定期受診し、必要に応じて眼の表面を保護するような目薬などで対応することがあります。
消化器症状
5歳前後から周期性嘔吐症という、ストレスや疲労時などに頻回な嘔吐が数時間〜数日続く病気になる方もいます。無痛症状によりお腹の痛みを訴えることが難しいため、悪い病気が隠れていないかを確認するために、早めに医療機関と相談することが大切です。
その他の症状
夜尿・昼間遺尿(おねしょや尿のちびり)、睡眠障害、なども報告されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は常染色体潜性(劣性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。これは2個あるNTRK1遺伝子(自身の父親と母親から1個ずつもらってくる)の両方がうまく働かなくなった場合に症状が出ます。多くの場合、ご両親それぞれが1個ずつ遺伝子の変化を持っていると考えられます(保因者と言います:違いのないNTRK1遺伝子を1個持つため症状は出ません)。この場合、次のお子さんでCIPAの体質を持つお子さんを授かる確率は25%となります。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
CIPAは指定難病および小児慢性特定疾患に登録されています。合併している症状や、その重症度に応じて医療費助成や療育手帳などのサポートを受けることができる可能性があります。社会資源の利用に関しては担当医にご確認ください。