NIPBL
遺伝子名: NIPBL
疾患名 |
コルネリア・デランゲ症候群
Cornelia de Lange syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 小慢情報センター 難病情報センター英語情報(OMIM) 日本語情報 |
NIPBL遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
一番初めの報告は1849年にまでさかのぼりますが、1933年のオランダ人の小児科医であるCornelia de Langeによる2女児の報告から疾患概念として確立しました。ヨーロッパからの報告では約50,000出生に1人と推定されています。現在までNIPBL遺伝子を含め、5つの遺伝子がコルネリア・デランゲ症候群の原因遺伝子として報告されています。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられたものであり、起こりうるすべての症状を網羅している訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ず持つとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
ほとんどの方で発達に課題を抱えていると言われますがその程度は様々です。一人歩きは3歳までに約半数、10歳までにほとんどの方で可能になると報告されています。お話をすることが苦手で、サイン言語を使う方もいます。お育ちを確認する経過の中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長
胎児期(お母さんのお腹にいるとき)から小柄と言われています。海外の方のデータにはなりますが、コルネリア・デランゲ症候群の方の成長曲線も作成されています(CdLS Foundation UK & Ireland: http://www.cdls.org.uk/growth-charts.html)。外来受診時や健診の際に成長の記録をつけていくことが重要です。
四肢
ほとんどの方で四肢、特に上肢に何かしらの症状が現れます。上肢が短い・指の本数が足りないなど、手の使いにくさを合併しやすい強い症状を認める方も約25%と報告されています。その他、肘関節拘縮(肘が伸び切らない)、手が小さい方もいます。手術のみでの改善は困難な場合が多く、早期からの作業療法(リハビリ)が重要になります。
消化器
胃食道逆流症をほとんどの方で認めます。嘔吐を繰り返したり、風邪をひいていないのに咳が長引いたりすることがあります。逆流症が食道炎や誤嚥性肺炎の原因となることもあります。また、胃食道逆流症以外にも生まれつきの消化管疾患を合併することもあり、お腹が張りやすい、急激にお腹を痛がるなどがあれば、担当の先生にご相談ください。
眼の症状
眼瞼下垂(まぶたが黒目にかかるくらい下がる)(60%)、近視(60%)、眼振(37%)と眼の症状の頻度は少なくありません。その他、鼻涙管狭窄、緑内障、斜視などを合併することもあります。定期的に眼科の先生と相談しながら、視力を育てていくことが重要となります。
腎・泌尿器
停留精巣(男児の73%)、尿道下裂(男児の9%)、膀胱尿管逆流(12%)と腎臓・泌尿器系も注意を要します。一度は、お腹の超音波検査での評価も検討されます。
神経
約25%の方でけいれんを合併し、最初の発作は2歳までに起こることが多いと言われています。お薬で発作を抑えられる方が多いようです。何か気になる動きがあればご相談ください。気になる動きをスマートフォンに撮影できると、より情報量が増えるため、余裕がある場合はご検討ください。
その他の症状
先天性心疾患は約30%の方に見られます。心臓超音波検査での評価が検討されます。また、反復性中耳炎、気道感染、肺炎などの感染症を合併しやすく、発熱時などは注意が必要になります。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。ほとんどの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じ程度と考えられます。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例もあると考えられます。この場合次の妊娠でコルネリア・デランゲ症候群の体質を持つお子さんを授かる可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群)、指定難病(先天異常症候群)に指定されています。重症度が国の認める基準を超えた場合に対象となり、申請には医師の診断書が必要となるため、担当医に相談ください。その他、合併している症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる可能性があります。社会資源の活用については担当医にご確認ください。