MAGEL2
遺伝子名: MAGEL2
疾患名 |
シャーフ・ヤング症候群
Schaaf-Yang syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
MAGEL2遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
2013年SchaafらによるMAGEL2遺伝子の違いを持つ4例の報告から疾患概念として確立しました。当初は臨床所見の特徴からプラダ―・ウィリー様症候群(Prader-Willi-like syndrome)と言われていましたが、症例が蓄積されることにより、現在はシャーフ・ヤング症候群(Schaaf-Yang syndrome:以降はSYSと記載します)と言われます。現在まで世界中で250名以上の方が診断されています。日本からも複数名の報告があり、自然歴などを研究している先生方もいらっしゃいます。今後、更に患者さんの情報が集まることも期待されます。
どういう症状があるの?
この体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は限られた報告をもとにまとめられているため、起こりうる症状のすべてを網羅している訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずしも持つとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、見られた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしていると言われます。運動発達の目安は、平均でお座り18か月(8-60か月)、はいはい31か月(12-84か月)、独歩50か月(14-132か月)と報告されています。一方、6歳以上の約70%の方は独歩ができないと言われています。言葉に関しては、始語36か月(6-132か月)、二語文40か月(17-60か月)と報告されています。ただし、7歳の方の約半数は言葉が出ていないと言われます。のんびりした発達に対し、療育(発達支援)が検討されます。
関節拘縮(関節が固まりうまく動かせないこと)
産まれたときから手関節・指関節を中心とした関節拘縮を80-90%の方で合併します。どんどん進行することは少ないようですが、整形外科・リハビリ科・療育の先生に相談することが必要です。
哺乳
新生児期から哺乳が苦手な方が多く、約半数の方で経管栄養(鼻から胃にチューブを挿入し、直接栄養を注入すること)が必要になると言われます。その後、上手になっていくかたも多いですが、どの程度飲めるかは慎重に評価する必要があります。
呼吸の症状
約半数の方で新生児期に呼吸の症状を認め、人工呼吸器が必要な方もいます。特に乳幼児期には注意が必要ですが幼児期以降、成人期にも呼吸器の症状が課題となる方もいるようです。実際に約80%の方で睡眠時無呼吸を認める、とも言われています。夜間の呼吸状態を時折、確認いただき止まっている様子があるようでしたら、担当医にご相談ください。
成長
約半数の方で低身長と言われています。現状、低身長に対する治療法はありませんが、今後の研究成果により低身長への対策が見つかってくる可能性もあります。
背骨
約半数の方で脊椎側弯(背骨が横に曲がること)を合併すると言われます。定期受診の際や、学校健診などで定期的に確認することが重要です。
消化器の症状
半数を超える方で便秘、胃食道逆流を合併します。後者は嘔吐や慢性的に続く咳の原因になります。症状が強い場合は、担当医へお知らせください。
けいれん
約30%の方で合併すると言われます。日本人では急性脳症に至る方がいることも分かってきました。気になる動きなど、心配事がありましたら担当医にご相談ください。
眼の症状
約70%の方で眼科合併症を認めます。その中には斜視(両眼が同じ方向をみていないこと)や、屈折異常(近視・遠視・乱視など)が含まれます。3歳くらいまでには一度、眼科の先生に診ていただきます。
その他の症状
体温調節障害(環境の影響で熱が上がり下がりしやすい)、肥満、性腺機能低下なども報告されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体優性(顕性)遺伝というパターンで伝わります。日本人の情報から約2/3が新生変異(精子や卵子が作られる過程でおきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は一般頻度と同じ程度と考えられます。
一方、MAGEL2遺伝子はインプリンティング遺伝子であり、父親から伝わったときだけ発現します。SYSの体質を持つ方の1/3では、父親が同じ遺伝子の違い持っている(保因者と言います)と言われています。父親が保因者であった場合、次のお子さんがSYSの体質を持つ可能性は理論値として50%となります。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
一方、MAGEL2遺伝子はインプリンティング遺伝子であり、父親から伝わったときだけ発現します。SYSの体質を持つ方の1/3では、父親が同じ遺伝子の違い持っている(保因者と言います)と言われています。父親が保因者であった場合、次のお子さんがSYSの体質を持つ可能性は理論値として50%となります。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群)、指定難病にはまだ指定されていません。合併している症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる可能性があります。 社会資源の活用については担当医にご確認ください。