EHMT1
遺伝子名: EHMT1
疾患名 |
クリーフストラ症候群
Kleefstra syndrome
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登録人数 | 4~6名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
札幌医科大学附属病院
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 難病情報センター英語情報(OMIM) 日本語情報 |
EHMT1遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
クリーフストラ症候群(Kleefstra syndrome : 以降はKSと記載します)は、2002年にDawsonらによって初めて報告され、2006年にKleefstraらが原因遺伝子としてEHMT1遺伝子を報告し、Kleefstra症候群と言われるようになりました。EHMT1遺伝子は9番染色体の9q34.3という場所に位置しています。EHMT1遺伝子自体が変化する場合、もしくは染色体9q34.3領域がEHMT1遺伝子を含めて欠けることにより発症するため、9q34欠失症候群とも言われます。現在まで、日本も含め複数名の報告があります。今後、更に患者さんの情報が集まってくることも期待されます。
どういう症状があるの?
KSの体質を持つ方では、成長や発達、身体つきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は、限られた報告をもとにまとめたものであり、すべてを網羅している訳ではありません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
筋緊張低下(筋肉の弱さ)
筋緊張低下の影響により、哺乳が苦手、不十分な呼吸やのんびりとした運動発達等を起こすことが知られています。特に小児期には感染により呼吸の症状が悪くなりやすいため、注意が必要です。
てんかん
約30%の方に合併すると言われます。けいれんを繰り返すような場合には小児神経専門の医師に診てもらい、薬物療法(抗てんかん薬)を行うか相談します。
運動発達
発達はのんびりすると言われますが、その程度は様々です。運動面はのんびりと発達しますが、ほとんどの方で2-3歳以降に歩けるようになると報告されています。のんびりした発達に対し、療育(発達支援)が検討されます。
言語発達
言葉を発すること(表出言語)に課題があります。意味のある言葉を獲得する方もいれば、言葉を使ったコミュニケーションが苦手なため、手話や絵などを用いる方もいます。一方、言語の理解力は良好と言われています。
心臓
30〜40%の方で生まれつきの心臓病(先天性心疾患)を合併すると報告されています。心臓超音波検査などをから先天性心疾患が見つかった場合、循環器科の医師に診てもらい治療方針を相談します。
腎・泌尿器の症状
30〜60%の方が停留精巣(精巣が陰嚢内にないこと)、尿道下裂(尿道の位置がずれていること)、小陰茎などを呈するため、症状がある場合には泌尿器科の医師に相談します。また、腎臓に形の違いを持つ方が10~30%と言われているため、超音波検査での評価も検討されます。
その他の症状
眼の症状(遠視など)、難聴、睡眠障害も報告されています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体優性(顕性)遺伝というパターンで伝わることが明らかになっています。 KSでは、EHMT1遺伝子自体の変化による場合と、EHMT1遺伝子を含む染色体9q34.3領域の欠失による場合があります。遺伝子の変化による場合は、ほとんど新生変異:配偶子(精子や卵子)が作られる過程における突然変異(偶然に起きたもので誰のせいでもない)によって発生すると報告されています。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は一般頻度と同じと考えられます。後者の染色体が欠けた場合は、ご両親のいずれかが染色体に形の違いをお持ちである場合があります。この場合、次の子さんがKSを持つ確率が一般頻度よりも高くなる可能性があります。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
KSは指定難病に登録されています。国が定める認定基準を超える重症度の場合に対象となります。申請には医師の診断書が必要となるため、担当医にご相談ください。伴っている症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。