DNMT3A
遺伝子名: DNMT3A
疾患名 |
Heyn-Sproul-Jackson症候群
Heyn-Sproul-Jackson syndrome
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登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 | 英語情報(OMIM) 日本語情報 |
DNMT3A遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
Heyn-Sproul-Jackson症候群(以降はHESJASと記載します)は、2019年にHeynらによりDNMT3A遺伝子の変化を持つ3人の患者さんの臨床症状が初めて報告されました。従来、DNMT3A遺伝子の変化は、身長や体重が通常より大きくなる過成長症候群のひとつ、Tatton-Brown-Rahman症候群の原因として知られていましたが、HESJASでも同じ遺伝子の変化で発症することが確認されました。初例報告されて間もないということもあり、今後報告される数は徐々に増えていくことが予想されます。
どういう症状があるの?
HESJASという体質を持つ方では、成長や発達、からだつきの特徴など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は、5例以下という限られた報告をもとにまとめられたものであり、多くのHESJASにみられる特徴的な症状であるかどうかは、今後の報告例にみられる症状も参考にする必要があるかもしれません。また、同じ体質を持つ方でも、症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
成長
背が低い(低身長)、頭が小さい(小頭症)方が多いようです。頭蓋骨が早く閉じる(頭蓋骨縫合早期癒合う)を合併した方も報告されています。成長曲線の平均から大きく下回ることが多いようですが、それぞれペースで育っていくようです。
発達
多くの方でのんびりしていると言われますが、その程度は様々です。成人期には会話が可能で、食事・更衣・排泄などは自立し、軽作業に従事する方もいます。発達を見守る中、療育(発達支援)が提案されることもあります。
毛髪
髪の毛が薄く切れやすい特徴があるようです。成人期までほとんど髪を切ったことがない方もおり、髪を長いまま保つことは難しいようです。現状、根本的な解決は難しく、医療美容(medical cosmetics)も選択肢のひとつになるかもしれません。
眼症状
小児期に斜視を、成人期に急速に進行する白内障を合併した方が報告されています。
腫瘍
成人期、首に腫瘍が発生した方がおられるようです。その他の腫瘍が発生しやすいかどうか、についてはよく分かっていません。
感染
呼吸器の感染症にはかかりやすいかもしれません。日々の感染予防を心がけ、感染時には医療機関へ受診するタイミングを慎重に検討する必要があります。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。今までの報告はすべて、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。新生変異の場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じと考えられます(正確な発生頻度は不明です)。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。HESJASでこのような報告は現在までありませんが、この場合次の妊娠でHESJASの体質を持つ子を授かる可能性は50%と見積もられます。遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
伴っている症状や、その程度に応じて療育手帳によるサポートを受けることができる場合があります。社会資源の活用については担当医に、ご確認ください。