CHST3
遺伝子名: CHST3
疾患名 |
ラーセン症候群
Larsen syndrome
|
---|---|
登録人数 | 1~3名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
|
ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 |
CHST3遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
ラーセン症候群(常染色体潜性遺伝型:以下はラーセン症候群と記載します)は2004年のオマーンの家系から初めて報告され、2008年に原因遺伝子としてCHST3遺伝子が同定されました。現在(2023年8月1日)までに世界中から約100例の報告があります。日本人の報告がまだ少なく、今後の症例集積が望まれます。
どういう症状があるの?
ラーセン症候群の体質を持つ方では骨に関連した症状、骨以外で気を注意した方がよい症状など、いくつかの注意した方がよい症状が知られています。以下の症状は、限られた報告をもとにまとめたものであり、すべてを網羅している訳ではありません。また、同じ体質を持つ方の中でも症状の種類や重さには個人差があることが知られており、すべての症状を必ずみとめるとは限りません。想定される症状について先回りして検査しておく必要があるのか、みられた症状が体質と関係したものかどうか判断する際の目安となるものです。
気をつけた方がよい症状
関節脱臼・関節拘縮
ほとんどの患者さんで出生時から関節の脱臼や拘縮(動かしにくさ)を合併しています。また生後1歳くらいまでに関節の動かしにくさが新たに出てくることもあるようです。関節症状としては股関節・膝関節・肘関節など、大きな関節に症状が出やすいことが知られています。関節症状に対し、複数回の手術を要する方もいますが、中には手術でもうまく治療できないこともあるようです。
脊椎側弯・後弯
半数以上の患者さんで脊椎側弯(横に曲がる)、後弯(脊椎の前後カーブが強くなる)を認めると言われます。関節脱臼・拘縮と合わせて担当医や整形外科医と連携して確認していくことが必要になります。
低身長
骨症状の影響から、ほとんどの方で胎児期からの低身長を認めます。成人期の身長が120cm前後と報告しているものもあります。低身長に対する成長ホルモン補充療法を行った報告が数例ありますが、効果が乏しいこと、上記の脊椎側弯を悪化させる可能性から、推奨はされておりません。
関節の痛み
多くの患者さんで10歳前後から関節の痛み(主に股関節・膝関節)を訴えると言われていますが原因はよく分かっていません。何か気になる症状がある場合は担当医にご相談ください。
その他の骨症状
上記以外にも、X脚、内反足、外反肘、強い内また、大きな関節以外の関節(指関節など)の動かしにくさの報告もあります。
難聴
約半数の方で難聴を合併すると言われます。この理由としては耳小骨という鼓膜の奥にあり、音を脳へ伝える小さな骨の形成が悪い可能性が言われています。新生児聴覚スクリーニングをされているお子さんが多いと思いますが、お育ちの中で聞こえの心配がある場合は、担当医にご相談ください。
心臓
CHST3遺伝子がよく機能している臓器として心臓が知られており、本症候群では約80%との報告もあります。心臓弁の働きが落ちている方が多く、出生時に問題ない場合も後から目立ってくることもあるようです。今まで一度も心臓の評価を行われていない、行われた記憶がない方は担当医へ相談ください。
発達
この体質をお持ちの方では一般的に知的発達は問題ないと言われます。ただし、骨症状から苦手な動きなどがあるため、日常生活におけるお手伝いは必要となってくるかもしれません。お育ちを確認する経過の中で、療育(発達支援)が提案されることもあります。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は常染色体潜性(劣性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。これは2個あるCHST3遺伝子(自身の父親と母親から1個ずつもらってくる)の両方がうまく働かなくなった場合に症状が出ます。多くの場合、ご両親それぞれが1個ずつ遺伝子の変化を持っていると考えられます(保因者と言います:違いのないCHST3遺伝子を1個持つため症状は出ません)。この場合、ラーセン症候群の体質を持つお子さんを授かる確率は25%となります。
遺伝のお話に関しては遺伝カウンセリング外来にてご相談ください。
遺伝のお話に関しては遺伝カウンセリング外来にてご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
ラーセン症候群(常染色体潜性遺伝型)は指定難病および小児慢性特定疾患には登録されておりません。小児慢性特定疾病HPに記載されているラーセン症候群は類似症状を来たす別の遺伝子を原因とする概念であり、CHST3遺伝子を原因としている方は対象となっていません。社会資源の利用に関しては担当医にご確認ください。