ARID1B
遺伝子名: ARID1B
疾患名 |
コフィン・シリス症候群
Coffin-Siris syndrome
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登録人数 | 4~6名 |
登録施設 |
東京都立小児総合医療センター
長野県立こども病院
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ピアカウンセリング | 希望する |
関連情報 |
ARID1B遺伝子について、みなさんと考えたいこと
はじめに
コフィン・シリス症候群は発達や成長がゆっくり、ミルクを飲むのが得意ではない、小指が小さいなどの特徴を持ちます。1970年にCoffinとSirisが最初に報告しました。これまで10種類以上の原因となる遺伝子が報告されておりその中でもARID1B遺伝子が最も多いものになります。小児慢性特定疾病や指定難病にも登録されており疾患の認知は広がってきております。また、遺伝子を詳しく調べる検査技術も進んできたことで、今後も情報が集まってくることが期待されます。
どういう症状があるの?
この体質をお持ちの方では、成長や発達、体の特徴などについて、気をつけたほうがよい特徴や症状がいくつか知られています。以下にご紹介する内容は、限られた報告や研究をもとにまとめられた情報で、すべての症状を網羅したものではありません。あくまで「この体質の方にみられることがある傾向」としてご覧ください。また、同じ体質を持っている方でも、症状のあらわれ方や程度には個人差があります。すべての方に同じような症状が出るわけではありません。この情報は、「どんな症状が出る可能性があるのか」を事前に把握しておくためや、実際に見られた症状がこの体質と関係しているかを医師と一緒に考える際の参考として役立ててください。
気をつけた方がよい症状
発達
発達はのんびりしていることが多く、その程度は様々です。お座り:12か月、ひとり歩き:3~4歳が目安となります。言葉も苦手な方が多く、初めての言葉は3~4歳となりますが、大きくなっても言葉でのコミュニケーションが苦手な方も少なくありません。お子さんの発達を見守りながら、療育(発達支援)が提案されることもあります。
成長
生まれたときの体格は他のお子さんと同じくらいですが、年齢とともに小柄な方が多くなります。半数以上のお子さんで成長曲線の一番下の線より小柄になると言われます。定期的に成長の記録をつけることが重要です。
神経の症状
多くの方で筋力が弱い「筋緊張低下」が見られ、運動発達や哺乳の症状につながることがあります。また、約半数のお子さんで、けいれん発作をきたすことがあります。気になる症状がある場合、担当医にご相談ください。気になる動きはスマートフォンなどで動画に収めていただけると診断の参考となります。
眼の症状
約半数の方で眼瞼下垂(まぶたが下がってしまう)、斜視(黒目の位置がずれる)、屈折異常(近視・遠視・乱視など)が見られると報告されています。定期的に眼科の先生と相談することが勧められます。
聞こえの症状
45%の方で難聴(聞こえの症状)が見られます。赤ちゃんの時に実施した聴力検査で問題ない場合も、中耳炎を繰り返すことで、後に聴力へ影響することもあります。かかりつけの耳鼻科を持つことが大切です。
骨の症状
骨の症状は合併しやすく、80%の方で小指が短い、小指の爪が小さい、という特徴を持ちます。また、約30%の方で側弯症(背骨が横に曲がる)が見られます。症状が見られた場合は整形外科の先生と相談します。
行動面での課題
多くのお子さんで、集中が続きにくい、多動(じっとしているのが難しく、興味のあるものを見つけると急に動き出す)、聴覚過敏(大きな音が苦手)など、行動面での特徴がみられることがあります。お子さんが生活しやすいように周囲と協力し、生活環境を整えることが大切です。
皮膚の症状
毛深い傾向があり、髪の毛は細い方が多いと言われています。これらが日常生活に与える影響は少なく、個性のひとつと考えてよいと思います。
その他の症状
生まれつきの心臓病、便秘症、風邪をひきやすく長引きやすい、歯のトラブルも見られやすい症状として知られています。
どういうふうに家族へ遺伝するの?
この体質は、常染色体顕性(優性)遺伝というパターンで伝わることが知られています。多くの場合、新生変異(精子や卵子が作られる過程で偶然おきた遺伝子の変化)によるものであり、誰のせいでもありません。この場合、次子再発率(同じ体質をもつお子さんを妊娠ごとに授かる確率)は、一般頻度と同じと考えられます。ただし、一般的に遺伝子の違いにより発症する症例では親子間でも症状の種類や重さが大きく異なる場合があることが知られており、子がもつ遺伝子の変化を、親も持っているにも関わらず、親の症状は軽微なため気づかれていない事例があります。この場合次の妊娠でコフィン・シリス症候群の体質を持つ子を授かる可能性は50%と見積もられます。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
遺伝に関するお話を希望される方は、遺伝カウンセリングにて対応できますので、ご相談ください。
利用できる社会資源はあるの?
*本ページの内容は、掲載時のものです。今後、新しい情報が得られたときは、適宜情報をアップデートしていきます。
小児慢性特定疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群)、指定難病に指定されています。重症度が国の認める基準を超えた場合に対象となり、申請には医師の診断書が必要となるため、担当医に相談ください。その他、合併している症状や、その程度に応じて療育手帳などによるサポートを受けることができる可能性があります。 社会資源の活用については担当医にご確認ください。